●西村(智)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの西村智奈美です。
先ほど、吉田委員の質問で、今回の法改正は国における障害者雇用の水増し問題に対応するものではないかという質問に対して、大臣は、そういうふうな趣旨だということをお答えになったというふうに思うんですね。
他方、障害者雇用については、やはりまだまだ民間も、もちろん国も、当然自治体も、もっと積極的にやっていただきたい、取り組んでいただきたいところは多々あるわけで、そのためにということで、厚労省内で設置をされた、今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会というものができて、そこでの議論が行われてきたんだというふうに私は思います。
ところが、研究会が開催されている一方で雇用の水増し問題が浮上してきたために、私は、研究会のせっかくの議論が今回の法改正に、実は余りというかほとんどというか、生かされなかったのではないかというふうに思えてなりません。大変残念です。
中身の濃い議論を大変多岐にわたる論点でやっていただいたと承知しているこの研究会ですけれども、まず確認をさせていただきたいんですが、この在り方研究会、ここでの議論は、どういう方向性で、何を主たる論点として議論をされてきたのか、そこのところからまず確認をさせてください。
●根本国務大臣 在り方研究会、今委員からお話がありましたように、障害者雇用を促進するための方策について検討を行って、昨年7月に報告書を取りまとめていただいたところであります。
この研究会は、我が国の障害者雇用を取り巻く状況等に大きな変化が生じている中で、働き方改革実行計画において、「多様な障害特性に対応した障害者雇用の促進、職場定着支援を進めるため、有識者による会議の場を設置し、障害者雇用に係る制度の在り方について幅広く検討を行う。」ということを踏まえて設置したものであります。
研究会では、障害者雇用促進制度の中心的役割を果たす雇用率制度や障害者雇用納付金制度のほか、多様な希望や特性等に対応した働き方の選択肢の拡大、安心して安定的に働き続けられる環境の整備、中小企業における障害者雇用の推進、こういうテーマを中心に今後のあり方の検討が行われ、そして報告書を昨年の7月に取りまとめていただきました。
●西村(智)委員 大きな論点、幾つか大臣も先ほど答弁してくださったんですけれども、やはり私が一番注目したのは雇用の質の確保と向上、これが研究会報告の中の論点の大きな一つだと私は思います。概要しか出ていないのでまだ詳しい内容はわかりませんけれども、その概要版として出されている研究会報告のやはり主たる論点の一つだったというふうに考えれば、先ほど大臣がおっしゃった、多様な選択肢を多様な障害の種別に合わせて、どういう合理的配慮が可能なのか、環境整備はどうか等々ということがもっと本来であれば法改正の中に入ってこなければいけなかったというふうに思うんです。
ところが、残念ながら、今回の法改正、特に民間のところでは特例給付金の新設それから認定制度の新設、これ自体は私も評価するところではあります。評価するところではあるんだけれども、もう少し踏み込んだ具体的な課題、今まさに働いていらっしゃる方々が直面していること、これから働こうとする方が直面していることに対応するような内容がもっとあってしかるべきだったんじゃないかというふうに思うんです。
実は、この点について、昨日行われた参考人質疑で、この在り方研究会のメンバーでもあられた眞保参考人が私の質問に対して、実は、今回の法改正の中では、在り方研究会で残された課題が相当数あるというふうに発言、答弁をされました。
委員の方が、研究会で議論してきたことの課題が相当数残されたままになっているというふうにおっしゃった。これについて、大臣、どういうふうにお考えですか。
●根本国務大臣 委員から今御紹介がありましたように、眞保参考人からそういう御発言があったということは私も承知しております。
労働政策審議会障害者雇用分科会においては、昨年七月に研究報告書が取りまとめられましたので、その取りまとめられた研究会報告書に加えて、国及び地方公共団体における障害者雇用の不適切計上の事案を受けて、今後の障害者雇用促進制度のあり方について早急に取り組むべき事項、これについて重点的に議論をしていただきました。
その結果、審議会の意見書において、中小企業に対する障害者雇用納付金の適用など、研究会報告書の一部の論点については、今回は十分に議論が深まらなかったことから、これは、審議会の意見書において、引き続き検討することが適当とされました。
こうした論点については、今後、労働政策と福祉政策との連携を図りながら、具体の検討の場の持ち方も含めて検討を進めていきたいと考えております。その際、今回の法案には施行後3年の見直し規定を設けていることも踏まえて、今後、労働政策審議会などにおいて引き続き議論をしていただきたいと思っております。
●西村(智)委員 まあ、見直し期間が3年ですからね。厚生労働省が法改正のときに見直しを3年と言ってくるのは極めて短期間。ですから、自覚はおありなんだと私は思っています。
先ほど大臣が答弁されたとおり、議論の場にきちんと当事者の方からも入っていただいて、当事者団体の意見もちゃんと含めてヒアリングをしてやっていただくということ、そして、残された課題について、具体的に一つ一つ丁寧に議論をして、そして答えを出していってもらいたい。ぜひこれをお願いしたいと思います。
とはいえ、それでお願いしっ放しというわけにもいきません。ですので、具体的に幾つかお伺いをしたいと思っているんですけれども、これも参考人質疑の中で大変重要な論点として皆さんが指摘をされておられました、自力通勤要件ですね。
これは、国の方の募集、採用の資格要件として当初は含まれていたんだけれども、当事者団体からの指摘があってそれは削除した。ところが、自治体の資格要件はやはり国に倣っているものが多いがために、自力により通勤ができ、かつ、介護者なしで業務の遂行が可能であること云々という要件が入っているところがかなりあるという指摘がありました。
この現状について厚労省としては把握していますでしょうか。
●根本国務大臣 地方公務員の採用試験における受験の資格要件、これは、各地方公共団体において、求める人材や職務遂行に必要な能力などを考慮して設定されているものであります。
このため、各地方公共団体における個別具体の資格要件についてまでは把握しておりませんが、他方で、地方自治体における採用試験において特定の障害種別の者に限定して職員の募集、採用が行われている事例が見られるとの報道があり、今、委員からもそういう御指摘がありました。これは承知しております。
障害者雇用促進法においては募集、採用における差別を禁止しており、応募資格において自力により通勤ができることなどの条件をつけることは、一部の障害者の方の応募を制限するものということでありますから、当該規定の趣旨に反するものと考えております。こういう観点から、総務省と連携して、障害者雇用促進法の趣旨に沿った採用活動を行うよう、地方公共団体に対して要請していきたいと思います。
さらに、都道府県労働局及びハローワークに対して、管内の地方公共団体が特定の障害種別の者に限定した募集、採用を実施していることを把握した場合には、必要な助言、啓発を行うよう指示しております。
これからも、総務省と連携して、地方公共団体に対して必要な対応を行っていきたいと考えております。
●西村(智)委員 できれば、ぜひ現状をまず把握してください。そういった問題があるから、問題が浮かび上がってきたケースに対して対応するというのではなくて、総務省とせっかく連携をするのであれば、総務省にまず現状を把握していただいて、その上で、先ほど大臣は、法の趣旨に反すると明確に答弁をしてくださいました。きのうの参考人質疑では間接差別だという指摘まであったんですよ。私もそのとおりだと思いながら聞かせていただきました。ですので、そういった考えをぜひしっかりと総務省の方に伝えて、現状を把握していただきたい。
それと、やはり在り方研究会で本当に議論にならなかったのかな、何で今回の法改正にこの部分が入ってこなかったのかなというふうに思うんですけれども、研究会においてはこれは議論にならなかったんですか、いかがでしたか。
●根本国務大臣 在り方研究会においては、通勤が困難な者に対する就労機会の確保の観点から、在宅就業やテレワークなどの多様で柔軟な働き方の拡大といった論点について議論されたものと承知をしております。
他方で、通勤支援など一部の論点については、今回は十分に議論が深まらなかったことから、意見書において、引き続き検討することが適当とされております。
今後、労働政策と福祉政策との連携を図りながら、具体の検討の場の持ち方も含めて検討を進めていきたいと思います。
●西村(智)委員 現状把握についてお答えはありませんでしたが、やはり現状を把握しないと、幾ら連携しても解決にはつながっていきません。ですので、現状把握をまずしっかりとお願いしたい。
あわせてなんですけれども、労働局への相談などはどうなっているでしょうか。
障害者からの相談、例えば差別があったとか、合理的配慮に関する相談があったとか、そういうことで、労働局への相談件数、そしてその内容はどういうものがあったか、紛争調整委員会の利用状況などはどうだったか、これをやはりきちんと把握した上で、そこから先の問題解決につながっていくというふうに思いますので、男女雇用機会均等法も相談件数や内容等々はしっかりと把握しております、ぜひ、大臣、把握していただきたいと思います。そして同様に、均等法は公表もしておりますので、公表もあわせてしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
●根本国務大臣 障害者に対する差別禁止、合理的配慮に係る相談件数などの利用実績、これについては平成28年度分から集計を開始しています。
現段階では、助言、指導、勧告件数及び紛争解決援助、調停の件数はいまだ多くはなく、事案の特定を避ける観点から、これまでその件数等を公表しておりません。
今後は、障害者に対する差別禁止や合理的配慮の提供義務に係る事業主、障害者の理解を促進するため、一層の周知啓発に努めるとともに、施行状況等を踏まえつつ、業務実績の公表についても検討していきたいと考えています。
●西村(智)委員 ぜひよろしくお願いいたします。
それで、今回の法律改正の中でも、雇用促進法の対象者について、やはり手帳を持っている方という限定があるということも参考人質疑の中でいろいろ意見をいただきました。
障害者手帳を持たない方についても、例えば差別解消法の視点から、雇用支援についてやるんだ、そういうことを検討する必要があるのではないか。これはいろいろな手法が多分考えられると思います。私も今、こうすべきだという答えがあるわけではありませんが、例えば雇用促進法の対象にするとか、研究会でこの点についてどういった議論があったのか、ぜひ大臣としての考えを伺いたいと思います。
●根本国務大臣 障害者差別解消法は、障害者差別の解消に関する基本的事項や、雇用以外の分野における差別解消の措置等を定めております。これは、日本における障害者差別の解消に関する一般法としての性格を有しております。
これに対して、障害者雇用促進法は、雇用の分野における障害者差別の解消に関する特別法、つまり一般的規定に対して特別的規定という位置づけになっておりますので、雇用の分野では障害者雇用促進法の規定が優先されるものと思っております。
したがって、手帳を持たない障害者に対する雇用支援に関してのお尋ねでありますが、これは、障害者雇用促進法の規定に沿ってお答えすることになります。
現行の障害者雇用促進法における障害者、これは、委員も既に御承知のとおりだと思いますが、「心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と雇用促進法ではされております。このため、障害者手帳所持者に限らず、職業相談や職業紹介等の支援の対象になります。
一方で、現行の雇用率制度では、この考え方については、要は法的公平性と安定性を確保する、こういう観点から、対象とする障害者を明確かつ容易に判定できるように、対象障害者の条件を原則として障害者手帳等を所持していることとされております。
●西村(智)委員 時間ですので、また次回よろしくお願いいたします。ありがとうございました。