【参考人】
眞保智子君(法政大学現代福祉学部教授)
西村正樹君(認定NPO法人DPI日本会議副議長、社会福祉法人アンビシャス業務執行理事・総合施設長)
川島 薫君(楽天ソシオビジネス株式会社代表取締役副社長)
小出隆司君(全国手をつなぐ育成会連合会副会長)
田中章治君(一般社団法人全日本視覚障害者協議会代表理事、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会副会長)
●西村(智)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの西村智奈美と申します。
きょうは、五名の参考人の皆様、大変貴重な御意見を聞かせていただき、まことにありがとうございます。
現状と分析、そして今後に向けた残された課題について、私なりに、皆さんのお話を伺いながら、今頭の中の整理をさせていただいているところですけれども、そのためにということで、きょうは、短い時間ですが、質問をさせていただきたいと思っております。
時間の都合上、全員の参考人の方に御質問できるかどうかわかりません。その点は、まず冒頭、お許しをいただきたいと思っております。
まず、西村参考人にお伺いをいたしたいと思います。
今回、公務部門、霞が関での障害者雇用水増し問題、これはまさに、田中参考人の言葉をかりれば障害者雇用の偽装問題だということでありますけれども、それに端を発して、今回、二年間で四千人の障害者を雇用するということが数値として、目標として打ち出されました。
試験においては合理的な配慮をある程度はされたと承知はいたしておりますけれども、それとてやはりまだまだ課題がある。しかし、それにも加えて、私、お話を伺っていて更に問題だと思いましたのは、職場での合理的配慮についての助成が十年限りであるということであります。駐車場の助成、それから職場介助者や手話通訳者といった助成は十年だということなんですけれども、これはやはり、私もお話を伺っていて、かなり問題だなというふうに思いました。
この点について、西村参考人からもう少し詳しく御説明をいただきたいと思っております。
●西村参考人 ありがとうございます。
制限規定は、全て、障害者が必要とするものを提供しないということになっています。自力通勤可の者、介助者なしで職務遂行能力可の者、活字印刷物に対応できる者、口頭面接に対応できる者はどういうことかというと、介助者は使ってはいけません、移動サービスとかそういうものは使ってはいけません、手話通訳は用意しません、点字試験は用意しませんということになっているんですね。それを入り口の段階で改善することが、実は職場に入った後にもつながってくるというふうに思っています。
私は道庁の方に勤めておりましたけれども、道庁の会議の中では、研修の中では手話通訳が配置をされたりしておりましたけれども、必ずしも点字の資料が用意されていたわけではありません。
障害者権利条約は、あらゆる場面で合理的配慮を提供すると。応募、募集、採用試験、採用後、そして、実は退職後も含めてということになります。
私は、こういった問題をまず一番きちんと検証していくには、一つは、既に自治体の中で雇用されている障害者が働くことに何を問題を抱えているのかということをきちんと足元から検証し、そして、その中でどういうことを改善しなくてはいけないのかということを議論しながら、この四千人の雇用については達成をしていくべきだというふうに思っています。
●西村(智)委員 働くということに関していえば、募集、採用そして雇用の継続というところまでずっとステージは続いていくわけですので、それを長期的に視野に入れたやはり政策というものが必要だということを改めて感じさせていただきました。
ですので、先ほどもお話にありましたとおり、やはり私も、雇用の中身についてきちんと分析をするということは今後も必要ではないかというふうに考えております。
その関連なんですけれども、障害者雇用促進法は、対象者が手帳を持っている方ということになっております。
私も実は地元で小児がんの経験者の方と接することが多いんですけれども、やはり、小さいときに投薬を受けて、それを理由として、背景として、体が小さかったり体力がなかなかおぼつかなかったりということで、一般的な就労が難しいという方もいらっしゃいます。
そういった方々を何とか、まあ、障害者手帳を持つということも一つの選択肢なんでしょうけれども、そうではなくて、雇用促進法の対象者にすれば事業主の方も意識を変えていただけるのではないかというふうに思っていたこともありまして、この対象者の見直しについて、これも西村参考人に伺いたいんですが、どういう考え方で見直していくべきか、このことについてお考えがあったらお願いいたします。
●西村参考人 手帳制度で雇用率を算定していくというのが一番簡単だと思います。
しかしながら、手帳制度というのはどういう制度なのかというと、内部機能障害でいえば、心臓、腎臓あるいは小腸、そういった障害がありますけれども、新たに肝機能だとかあるいはHIVだとか、そういうものが追加されてきている経過があります。視力障害についても、両目に障害があれば該当するけれども、片目が見えないということでは障害者手帳の該当になりません。障害者手帳自体が、極めて医学的な、別表で掲げられた、筋力が何キログラム以上とかそういったことで限定されています。
この枠組みをどう拡大していくのかということに関しては、この間の障害福祉制度の中でそれはヒントがあるというふうに思っています。例えば、障害基礎年金の支給については一型糖尿病の方たちも対象になっておりますけれども、彼ら、彼女たちは必ずしも手帳を持っているわけではありません。それから、さまざまな障害福祉サービスの利用についても、手帳ではなくて、それ以外のさまざまな障害支援区分によって、必要なサービスというものが提供されています。
したがいまして、厚生労働省という、厚生省と労働省がせっかく一緒になったわけですから、そして社会モデルという考え方を制度の中で盛り込んだわけですから、さまざまな障害を判定していく要素がたくさんあると思っていますので、一定の時間は必要かもしれませんけれども、そういった、障害者手帳だけではない、本来の、基本法なり雇用促進法なり、あるいは権利条約に基づく一つの基準を考えていくということが重要だと思っています。
●西村(智)委員 ありがとうございます。
先ほど田中参考人は、今回、人事院で合格された754人の中で視覚障害の方が43人ではないか、そして点字を使用されている方がそのうちお二人ではないかというようなお話がありました。
川島参考人にお伺いをしたいと思っております。
御社ではどういった方々が対象でいらっしゃるのか。先ほど、手帳を持っておられる方というふうにお伺いをしたと思いますが、そういった方ということが今現在対象なのか、また、今後、今ほど問題になっておりました対象者についてどういうふうにお考えか。それから、視覚障害や聴覚障害の方々にどういった業務をやっていただいているのか。ちょっと、ヒントがあれば、お願いしたいと思います。
●川島参考人 対象につきましては、やはり特例子会社というのもありますので、障害者の方になります。手帳を持っている方ですね。健常者の方は、障害者のサポートというわけではなくて、人手が足りない職種のところに健常者の人を入れているだけですね。障害者と同じ、同等のレベルで入れる。
視覚障害の方、聴覚障害の方のそれぞれの仕事なんですが、視覚障害の方もやはり、パソコンのスキルは意外と高いんですね。弊社では、ウエブ関係の仕事、業務改善ですね。マクロを組んでいただいたりとか、なるべく納期の長い仕事をお願いしています。楽天の方々もパソコンのスキルは高いんですけれども、マクロを組んだりとか細々とした時間をとれない。コピペしてエクセルをやっている、それを私たちの方にいただいて、視覚障害の方々がマクロを組んで戻してあげるとか、そういう仕事をしています。
聴覚の方々は、やはりなかなか人とのコミュニケーションは難しいので、コミュニケーションがないところですね。ウエブ関係のデザインの仕事が結構中心となっています。あと、裏方の、人事関係の事務の手続の仕事、そういったことも行ったりしています。
●西村(智)委員 ありがとうございます。
楽天さんの方でも非常に工夫されているということなんですけれども、仕事の切り出しと申しましょうか、どういったことをやっていただくのかということは、やはり時間をかけてやっていかないと、それまでの経験とか蓄積を踏まえてやっていかないと、幾ら数をふやしましょうといっても、やはりそこは数合わせに終わってしまうんじゃないかという危険性があるということかなというふうにお話を伺っておりました。
その流れで小出参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、通勤支援の御質問に際して、自力通勤が求められるという一方で、他方で障害者総合支援法では移動支援は通勤支援には使えないということは、やはりこれは間接差別ではないかというお話がございました。まさにそのとおりというふうに私も思ってお伺いをいたしたところなんですけれども、やはり、仕事の切り分けといいましょうか、数合わせではない、本当の意味での障害者雇用の促進のためには時間をかけた取組が必要だというふうに私自身も思っております。改めてその点を小出参考人からお答えいただきたいと思っております。
●小出参考人 ありがとうございます。
先ほどもお答えしましたように、通勤支援、これはネックになっている。そのとおりでございまして、今、いろいろな働き方、研究会の方でもいろいろな項目が挙がっておりましたけれども、テレワークとか在宅での仕事という、本当に、移動できない人たちも仕事ができるんだ、そういう仕組みですね。そういう仕組みもつくっていけたらそのことは一つは解決できますけれども、本当に通勤というのは私ども頭が痛い問題でございまして、もう少し何らかの支援というものを見出せないかな、そういうふうに思っているところでございます。
ありがとうございました。
●西村(智)委員 時間も限られておるんですけれども、今回の法改正、私は、公務部門、霞が関におけるやはり障害者雇用水増し問題が出てきたということで、ちょっと、本来であればもう少し中身を詰めて議論して、いい内容のもの、もっと深い多岐にわたる内容の法改正があってしかるべきだったんだと思っております。
そういう意味で、各参考人の皆さんに、今後に向けて残された課題は何だというふうにお考えなのか、お一方ずつ短く御答弁いただけたら幸いです。
●冨岡委員長 じゃ、眞保さんからよろしいですか。簡潔にお願いしたいと思います、時間が限られてまいっておりますので。
●眞保参考人 眞保でございます。
私は、在り方研究会で、委員として議論にかかわらせていただきました。実は、在り方研究会では相当な数がまだ継続の検討課題になっておりまして、そのいずれも重要な内容でございますので、今後、そちらの議論を進めていけたらなというふうに考えております。
以上です。
●西村参考人 西村です。
雇用促進法は私はいい法律だと思っています。この法律の理念そして目的が確実に実現される、各指針の内容が確実に反映される、まずもってはその一歩を踏み出すことが重要だと思っています。
●川島参考人 企業においては、やはり雇用率のあり方ですね。雇用率の算定基準が余りにも曖昧過ぎてしまって、五年ごとにただ企業が上がっていくのを待つというのは、これはちょっとどうかなというふうには考えております。
●小出参考人 ありがとうございます。
まず、公務部門における皆様の仕事、自分の周りはどういう仕事かと。能力があればあるほどいろいろな仕事をやっております。でも、やらなくてもいい仕事もあるかもしれない。それを切り出していただきたい。このことは知的障害でもできるんじゃないかという仕事も一緒にやってしまっているというところがありますので、もう少し時間をかけて、皆さんの周りの仕事を見直していただいて、切り出していただきたい、そういうふうに思います。
●田中参考人 先ほど私は何点か申し上げたんですが、中でも一番大事だと思っているのは、やはり合理的配慮の問題です。
現時点で2700何人ということですが、一度にそういう方が各省庁に入っていくわけですね。その方々の継続雇用は大丈夫か。つまり、職場定着をするためにはいわゆる合理的配慮が徹底して検討されなければならないと思います。そういう意味で、一人一人の職場環境はどうなっているか、その辺をぜひこの機会に吟味していただきたい、これが一番言いたいことです。
●西村(智)委員 5名の参考人の方には、本当にありがとうございました。今後の法案審議に生かしてまいりたいと思います。
ありがとうございます。終わります。