■西村(智)委員
西村智奈美です。
きょうは、政治姿勢、そして政治とカネをめぐる問題ということで集中審議でありますけれども、これまでの総理の答弁を聞いていまして、私もやはり残念だなと思います。
自民党政権が発足して既に3年以上が経過をした。
民主党政権の3年3カ月、私は、今振り返ってみても、子ども手当を中学校卒業時まで延長したり、また高校授業料の実質無償化をやって、これは当時、自民党からは、ばらまき3Kといってかなり批判をされておりましたけれども、それはよかったんでしょうね、効果を認めていただいているということだと思いますが、今もこれは継続をされている。しかし、その中でも、3年3カ月の中で、私たちは確かにできなかったこともありました。そのことについては真摯に反省をいたしております。
しかし、今、安倍政権がスタートして3年たちました。もう十分な時間がたったと思います。いまだに民主党のことをたたいて、たたけば自分たちのよさが浮き彫りになるというこのやり方は、私はもうそろそろおやめになった方がいいんじゃないかというふうに思うんですね。
先ほどの大串委員への答弁に対しても、自民党政権のときには、民主党政権をたたくときにも担当大臣はちゃんと呼んでいたと言いますけれども、本当にそうなんでしょうか。今確認はできませんけれども、後で確認をちゃんとした上で私も申し上げたいと思いますけれども、決してそんなことはなかったと私の記憶の中では思います。ですから、そのような口から出任せみたいな答弁はもうやめてもらいたい、そういうふうにまず冒頭申し上げておきます。
それで、きょうは私、まず政治姿勢ということについて申し上げたいんです。
きょうは、甘利前大臣、それから遠藤大臣、いろいろな大臣の問題についても言われておりますけれども、実は、衆議院の品位をおとしめているんじゃないかと思われる人たちは大臣だけではないんですね。特に安倍チルドレンと言われる当選回数の比較的若い、若手の議員の言動、大変問題になってまいりました。
ちょっと思い起こしてみますと、一番最初に申し上げたいのは、もうこれは本当に事例は幾つもあるんですけれども、大西英男議員が女性議員に対して、質問しているときに、早く結婚して子供を産まないとダメだぞなどと発言をして、これは後に謝罪をしました。それは、謝罪はよかったことだと思います。
それから、その後、中川郁子農水政務官と門博文代議士との、これは不倫デートなどと称されておりますけれども、そのような報道があった。
それから、また大西英男議員ですが、マスコミを懲らしめるためには広告料収入をなくすのが一番いいと。これは、やはり先ほどの質問ともつながってまいりますけれども、マスコミに対する言論統制ですよね。そのようなことを党全体としてやらせているのではないか、そういうことをうかがわせるような発言もありました。
また、武藤貴也衆議院議員、この方についてはほかにもいろいろあるんですけれども、やはり一番問題なのは、議員枠の未公開株というものがあるということをうかがわせながら取引を持ちかけるという、まあ、詐欺ですね。このような金銭トラブルがあった。
また、ふくだ峰之衆議院議員の元秘書、居住実態のない地域から立候補をして当選した市議さんですが、彼女が当選無効ということで、裁判所の判決も下された。このふくだ峰之衆議院議員はマイナンバー担当の補佐官であったということもありまして、これは、みずからの職務のことを考えても本当にひどい、軽率な経過だったと思います。
そして、ここに来て、宮崎謙介衆議院議員が、奥様の出産入院中に自宅に女性を連れ込んだという報道もございました。
私、宮崎議員が育休宣言をされたときに、実はちょっと期待をしたんです。なかなか男性の育休の取得が進んでいかないという中で、国会議員が育休を取得するということを宣言した。それは、職務との関係でどうなのか、あるいは、私たちは言ってみれば会社の中で雇われている従業員とはちょっと異なりますから、そういう意味ではマッチしないところもあるのではないかというふうには言われておりましたけれども、それでも、今の社会の風潮に一石を投じるのではないかというふうに期待をしていました。しかし、今ここに至ってみると、結局のところ、売名行為のためにあの育休宣言をしたのではないかということを疑わざるを得ない。これは非常に残念なことです。
総理、この一連の自民党の若手議員によるさまざまな不祥事、それに関する報道、これについてどのように思われますか。
■安倍内閣総理大臣
最後に挙げられた例については、当該週刊誌の記事を読んでおりませんから、コメントは控えさせていただきたい、こう思う次第でございますが、いずれにいたしましても、信なくば立たず、やはり国民の信頼の上に我々は政治活動があるわけでございますし、政策を実行していく上においても国民の信頼が必要だろう。そのために、それをしっかりと国会議員は、あるいは政治家は拳々服膺しながら、みずからの行動を律していく必要があるだろう、このように思う次第でございます。
■西村(智)委員
先ほどの報道を読んでいないから答えられないというのも、ちょっとおかしな話だと思うんですね。
宮崎議員が育休宣言をされたときに、総理は、新年の挨拶に来られた議員に対して、それでこそ政治家だと言って励ましておられるわけなんです。それも、恐らくは報道を通じてしか総理は知り得なかったはずなんです。それについてはちゃんとコメントをしておられて、そして、今回のことについてコメントができない、その記事を読んでいないということについては、私はちょっと事実にそごがあるのではないかというふうに思っております。
また、今もやじが後ろの方からいろいろ飛んでおりますけれども、この委員会の雰囲気、やはりちょっと異常だと思います。これまでも、大臣が答弁をしているときに、私もやじがはっきり聞こえたんですけれども、大臣、もっと長く答弁して時間稼ぎをしろというような発言がありましたり、また、今もそうなんですけれども、寝ている方がいらっしゃるわけなんですよ。いびきも聞こえるんです。大変残念なことで、みんなでとにかく衆議院の品位を高めようと思っているときにこのような事態が起きているということは本当に残念なことだというふうに思いますので、今のお言葉、総理、よくよく党内にもしっかりと行き渡らせていただいて、これからぜひ実のある国会での議論ができるようにお願いをしたいというふうに思います。
では、政策論争ということですので、これから政策の話をさせていただきたいと思いますが、同一労働同一賃金について伺いたいと思います。
総理、所信表明演説で、同一労働同一賃金について、均等待遇まで踏み込んで、ことしの春に作成をする一億総活躍プランですか、そこに内容を盛り込むということを明らかにされました。
私、この同一労働同一賃金、そして均等待遇という言葉が総理の口から出てきたので、本当にびっくりしました。
総理は、これまでは、アベノミクスという経済政策のもとで、大手のところ、あるいは大都市、そういったところを潤わせてから、そしてその恩恵を地域に、あるいは働いている人たちを潤すという、言ってみればトリクルダウンの考え方によって経済政策を運営しているものとばかり思っておりましたけれども、均等待遇という、発想が百八十度違うことをみずからがおっしゃったので、これは本当にありがとうございますというふうにも思いつつ、だとすれば、なぜ昨年、労働者派遣法などという改悪法案を強行採決したのかということは非常に不思議に思うわけでありますけれども、きょうは、総理が考えておられる均等待遇とは一体何なのかということをぜひ聞かせていただきたいというふうに思っております。
実は、私たち民主党も、均等待遇の実現には長く取り組んでまいりました。昨年は、維新の党と一緒に、同一労働同一賃金推進法案提出もいたしました。また、パート労働法、それから男女雇用機会均等法、こういったものの改正時には修正案を提出したり、いろいろな対案的なものを出したりしてきたんですけれども、私たちが考えている均等待遇と総理が考えている均等待遇というのはどうも違うんじゃないかというふうに、私、先日の長妻委員とのやりとりを聞いていて、思わざるを得なかったんです。
ちょっとここは確認をしたいと思いますけれども、総理の答弁で、こういうふうにおっしゃっておられます。所信でも同じです。「仕事の内容や経験、責任、人材活用の仕組みなどの諸要素が同じであれば同一の待遇を保障する」、これを均等待遇というふうに捉えていらっしゃるようなんですけれども、これは総理の答弁をそのまま読んでおりますが、そのとおりだということでよろしいでしょうか。
■安倍内閣総理大臣
答弁する前に、私が言っていないことを言ったとして発言しておられますので、少し訂正をさせていただきたいと思います。
宮崎議員に対して、いわばイクメンについて、私はこれは発言をしておりませんから。恐らく週刊誌か何かで私が発言したということが書いてあったものを紹介しておられるんでしょうけれども、私は発言をしておりませんので訂正をさせていただきたいと思いますし、私が、ここに座って大臣に、長く答弁して時間を費やせと指示したことはございませんので。あるのであれば……(西村(智)委員「後ろが言ったの。総理は言っていません」と呼ぶ)それだったらいいですが、私は言っていないということは申し上げておきたいと思います。大切なことでありますから答弁をさせていただきたい、修正をさせていただきたい、こう思った次第でございます。
そこで、均等待遇、均衡待遇等については、均等待遇については、仕事の内容や経験、責任、人材活用の仕組みなどの諸要素が同じであれば同一の待遇を保障することということでございます。
■西村(智)委員
今、そのとおりだというふうに確認いただいたと思います。
それで、この前の長妻委員のお話も総理はどのくらい理解されていたのかなとちょっと心配だったので、私きょう、あえてとても簡略化して、均等待遇の幾つかのパターン、これが均等待遇かな、あるいはこういうふうにしたら均等待遇になるかなと思われるパターンをとても簡略化して、また三つに限定して持ってまいりましたので、パネルで見ていただきたいと思うんです。
今総理がおっしゃった均等待遇のパターンは、仕事の内容が同じで、経験と責任と人材活用の仕組みが同じということですから、これはパターン1の中で、つまり、同じ仕事をしていて、そのほかの要素もみんな同じなんだけれども、なぜか賃金が違う人たちがこの中にいるときに、それは同じ待遇にしていくようにしましょうよということが均等待遇の一のパターン。これが総理が言っておられることだと思うんですね。
ところが、実は、世間でいいますと、この均等待遇一のパターンというのはそんなに多くないんです。実際、パート労働法や男女雇用機会均等法の中では、仮にこういう人たちがいたら、それは均等な待遇を実現するようにしましょうということで今既に法律はなっておりますので、ここはもう既に担保されているものであるというふうに言わなければなりません。
だから、今、実際はまだ10万とか20万とかもらっている方々、賃金のばらつきがあるとしても、法律でいえば、そこのところは本当は同じ待遇を確保しなければならないというのが、このパターン1なんです。
問題は何かといいますと、このパターン2なんです。
これは何かといいますと、先日長妻委員が指摘した、スーパーの中でのレジ打ちをやっている方とそれから正社員で仕入れをやっている方のグループがありますよということを示した例示もこれに当たるんですけれども、例えば、同じ仕事をしていても、人材活用の仕組みが同じというところが条件になって、雇用管理区分BとC、違う雇用管理区分に入れられてしまうことがあります。
何かといいますと、例えば、転勤ができますかというふうに入社試験のときなどに聞かれるわけですね。そのときに、家族の事情とかいろいろ考えて、それはちょっと難しいかもしれませんというふうに言われたら、違う雇用管理区分に入れられる。そして、転勤でも何でもいつでもやりますという人たちが、また別の雇用管理区分に入れられる。そうすると、転勤できると言った人たちがこの高い賃金のグループに入れられて、そして、転勤できませんと言われた人たちが安い賃金の雇用管理区分に入れられるということなんですね。
だから、今言ったように、転勤できる、できないというところで単にグループ分けされたんだけれども、実際にやっている仕事の中身、責任の重さ、これは全く同じなのに違う賃金体系になってしまっているというグループが非常に多いということが今問題になっているんです。
総理は、このパターン2についても均等待遇を実現したいというふうに考えてくださっているでしょうか。
■安倍内閣総理大臣
これはケース・バイ・ケースというふうに考えなければならないんだろうと思います。
そもそも、この雇用管理区分のBとCがどういう雇用管理区分か。今たまたま、転勤をする、しないという区分で言われました。しかし、その区分が、例えば一般職と総合職ということもあるわけであります。それは、いわば労働の質の違いやキャリアコースの違い、学歴や資格の相違を考慮に入れて、例えば、欧州においては賃金差の正当性を判断することとされているわけでございます。しかし、その場合もケース・バイ・ケースになってくるわけでございます。そうしたことも踏まえて、今度しっかりと検討を進めていきたい、こう考えております。
また、この仕事Aについては、20万と10万というのは、例えば、これは大体同じであっても、正規と非正規という違いだけでそうであるならば、それを直していこうというのは明確であろう、こう考えているところでございます。
■西村(智)委員
ケース・バイ・ケースとおっしゃいましたけれども、ケース・バイ・ケースが今まで横行してきたがゆえに、賃金の格差が放置されてきているんですよ。そのことを総理は御存じないんだということを今私は改めて知らされました。
それで、自民党内で、先週金曜日に同一労働同一賃金に関するプロジェクトチームの会合が初めて開かれたそうなんですけれども、今の総理の御答弁でも、これから内容を考えていただく、考えてもらうんだということのようなんですけれども、果たしてこんなスピードで本当にことしの春までのプランに間に合うのかどうか、すごく不安ですね。
結局、できてきたものが、今総理がおっしゃったみたいに、ケース・バイ・ケースで、これは均等待遇は実現するものだけれども、これは均等待遇は実現しなくてもいいものですというようなお墨つきを与えてしまったら、世界的な流れから逆行してしまうことになりますよ。(安倍内閣総理大臣「欧州でもケース・バイ・ケースです」と呼ぶ)いいえ。
では、質問の仕方を変えたいと思います。
今、欧州は違うんだというふうにおっしゃいましたが、日本は1967年にILO100号条約というのを批准しています。ここには同一価値労働同一賃金の原則が記されていて、日本も50年前に批准している条約ですね。
それで、総理は、長妻委員との質疑の中でも、法律を制定することが必要だったら法律もちゃんとつくりますというふうに言われておりますけれども、総理、ILO条約から求められている法律、これは、今回の均等待遇の実現に向けて当然策定していくことになるというふうに思いますけれども、それでよろしいですか。
■安倍内閣総理大臣
このILO100号条約は賃金において男女差別のないことを求めていますが、同条約が求める原則を十分に反映するため、同一価値労働についての男女労働者の同一報酬が実現できるよう法律で規定すべきこと等の見解がILO条約勧告適用専門家委員会において示されていることは承知をしております。
この点に関し、これまで日本政府からは、労働基準法第四条は「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」と規定し、本条約の要請を満たしていると説明をしてきております。
先ほどのパターン3において、同じ仕事をしている中において男女差があれば、これは当然労基法の違反になる、こういうことになるのではないかと思うわけであります。
しかしながら、今般、同一労働同一賃金の実現に踏み込むこととした背景には、女性では、30代半ば以降、出産、育児等を機に非正規雇用で働く方が多くなっているという事実があります。これまでも、政府としては、女性が出産、育児を経ても継続就業できるような環境の整備をし、望まずに非正規雇用となる方をふやさない努力をしてきていますが、今般、これに加えて、非正規雇用で働く方の待遇改善をさらに徹底することは、男女間の賃金格差の是正にも資するものであり、同条約の要請により一層応えることとなると考えております。
今春に取りまとめるニッポン一億総活躍プランにおいて、同一労働同一賃金の具体的な方向性を示したいと考えています。これに従って、必要な制度改正を検討することとなるわけであります。
ケース・バイ・ケースと申し上げましたのは、ケース・バイ・ケースでやらないというわけではなくて、これはまさに今後、今まで全く踏み込んでいなかったこの同一労働同一賃金に踏み込む中において、今までこれは忘れ去られていたもの、あるいは、これはしっかりと頑張っている人たちが差別的な扱いを受けていると、新たに同一労働同一賃金に踏み込んだことによってそれが明らかになってくれば、ケース・バイ・ケースの中においてしっかりと対応していくことが可能となるということでありまして、今、西村委員がおっしゃったように、我々がこれに踏み込んでも今までと変わらないかのような印象を与えることは間違っているのではないかということは申し上げておきたいと思います。
■西村(智)委員
では、さっき総理からパターン3と言っていただきましたので、パターン3の方もちょっと言います。
まず先に言っておきますと、ILO条約は、労働基準法の第四条が満たしているというふうに考えていると答弁がありましたけれども、ILOはそのようには認めておりません。そこのところは明確にしておきます。
なおかつ、この均等待遇のパターン3というものですけれども、これは、一つの仕事をしている中で明らかに男性と女性の賃金の格差があるというケースなんですね。これは指数であらわしていますけれども、この会社は比較的いい会社、男性の賃金指数を100としますと、女性が85なんです。平均しますと、今、日本の国内では、男性の正社員を100とすると女性の正社員の賃金は大体70、7割ぐらいですから、その中で85を出しているということは、まあまあいい会社の方ではあるというふうに思うんです。
さっき総理は、均等待遇を実現すればこれは解消されるというふうにおっしゃったと思うんですが、これは実は実際に裁判になった事件でして、とある会社の、同じ年代に入社した、事務系の同じ仕事をしている男女別の賃金の分布を、裁判の原告団が資料として提出をしたものです。
これはちょっと見にくいんですけれども、プライバシーのこともあるので、逆にちょっと見にくいまま出させてもらっていますが、平成13年から平成14年、そして平成23年に至るまで、賃金の高い方を左にして、賃金の低い方を右にして、男性と女性で入れていったんですね。男性が青です。女性が赤です。そうすると、明らかに男性の賃金が左寄りに寄っていて、女性の賃金が右寄りに寄っていますよね。格差があるんです。すごくはっきりしている格差があるんです。
ところが、裁判所はこの事件で、男女間の賃金格差はあると言って認めました、認めたんだけれども、これだけの賃金の差があるということは会社の裁量の範囲内だから違法とは言えないということで、これは男女間の賃金差別ではないですかといって起こした原告の訴えを、上告を棄却されちゃったんですよ。これが今の日本の現状なんです。格差があると言って認めているにもかかわらず、実際に裁判になると、最後は、裁量だと言って負けちゃうんですよ。
つまり、今総理がケース・バイ・ケースだというふうにおっしゃったことがどんどんどんどん拡大解釈されていって、まあ実際にケース・バイ・ケースなんていう法律はないはずですけれども、そういったものがこれからさらに出ていってしまうと、会社のいわゆるさじかげんで何でもこれから、このような格差があるとしてもそれが認められちゃうということになるんですよ。本当にこれでいいと思いますか、総理。
■安倍内閣総理大臣
裁判については、個々のケースでしょうし、どういうケースか私は存じ上げませんから、裁判の判決とこの一般論としての図でお示しをされたことを今同じに扱うわけにはいかないんだろうと思うわけでございます。裁判については、これは個々のまさにケースでございまして、個々のケースと言ったのは、先ほどのケース・バイ・ケースと同じように申し上げているのではなくて、まさに裁判は裁判で見ていただかなければコメントのしようがない、このように思うわけであります。
先ほど私が申し上げましたように、パターン3については、全ての条件が同じ場合には、労働者が女性であることを理由として男女の差別的取り扱いが可能かを問うように見受けられるわけでありまして、これは男女差別を禁ずる労働基準法第四条に違反するものと考えるわけでありますが、個別のケースについては、これは裁判所が判断することでありますから申し上げようがないということを申し上げるしかないと思います。
■西村(智)委員
やる気がないということがとてもよくわかりました。
この判決が出ないような、要は、これだけ格差があるということを認めていながら、会社の裁量だということでこれが認められてしまう法体系であるということが、今の日本の法律での問題点なんですよ。
雇用管理区分というものがあること、そして、男女の賃金格差が厳然としてあるにもかかわらずそれが野放しになっているということ、これを防止するという法律をつくらないと、本当の意味での均等待遇なんて言えませんよ。そこはよくよく申し上げておきます。
ですから、私、プランを大変楽しみにしております。この二点がクリアされるものでなければ、これはもう絵に描いた餅どころのものではありません。これをつくりますと言って、でき上がったものを見せられたら全く違うものができてきた、それはもう詐欺ですからね。そういったことがないようにきちんと詰めていただいて、提出をしていただきますように、ぜひお願いをしたいと思います。
それでは次に、児童扶養手当に移りたいと思います。
児童扶養手当、民主党政権のときに父子世帯まで対象を拡大いたしました。今回は、安倍総理、第二子、第三子以降の子供たちについても加算額をふやしてくれるということで、これは本当にありがとうございます。だけれども、その加算の額が倍増だと言っておられますけれども、これは倍増じゃないですよね。正確に言ってください。
■安倍内閣総理大臣
昨年12月に、ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクトを取りまとめたところでありまして、就業による自立に向けた支援を基本としつつ、総合的な取り組みを充実することとしております。
具体的には、児童扶養手当については、限られた財源であるということは御承知のとおりだろうと思いますが、その中で、特に、経済的に厳しい家庭に重点を置いて、子供が二人以上の一人親家庭の加算を倍増し、第二子は月1万円、そして第三子以降は月6千円と最大限の努力をしているところでございます。
もちろん、そういう母子世帯に対してできる限り応援をしていきたいというのは、これはもう与野党を問わず同じ気持ちなんだろうと思います。そこで、限られた財源の中でいかにそれを実現していくかということが大切なんだろう、こう思う次第でございまして、我々は、今回、第二子、第三子それぞれ、これを倍増した、こういうことでございます。
■西村(智)委員
私、正確におっしゃってくださいと質問したんですけれども、今のは全然正確じゃないですよね。6割の人しか倍増にならないんでしょう。6割以外の方は所得制限がかかって、年収172万円の方だって減額されて支給されるんでしょう、加算額が。そういうことを正確におっしゃらないで加算を倍増しますと言うのは、過大広告じゃないですか。
最初、この加算額が倍増されるというので、報道もいろいろ出ました。その必要額は105億円だといって報道に出ました。私も、105億円かと思っていましたら、実際は83億円だというんですね。20億円けちられてしまいました。削られてしまった。
申し上げましたように、年収172万円の人たちに対する加算も、これは所得制限がかかるということで削られてしまうんですよ。冷たい話ですよ。
所得の低い一人親世帯に対して支払われる児童扶養手当。児童扶養手当というのは、申すまでもないですが、一人親世帯に対する給付です。これが加算されるということで、喜んだ。喜んだところが、所得の制限が入ってしまって、倍増と言われていたその看板も、実際、扉をあけて中に入ってみたら全然違う中身のものであったというのは、これはごまかしじゃないですか。加算がゼロになる方もいらっしゃるんですね。ということになると、本当にひどい話で、これは一人親世帯に対してはとても冷たい。
それは加算はありがたいですよ、重ねて申し上げます。だけれども、所得制限がその厳しい中にもさらにかけられるというのは、これはやはりとんでもないことじゃないですか。
それから、今回、児童扶養手当現況届というものが、不正受給を防止するために強化されるということになっております。
これは、総理、確認したいんですけれども、養育費の請求、これを改めて確認するということなんですけれども、世間には、DVの被害に遭ってなかなか養育費の請求ができないという方、夫が失踪してしまってそういったことができないという方がいらっしゃいます。そういった方々に対しても養育費の請求を義務づけて、それを児童扶養手当の支給の要件にするなどということはまさかないと思いますけれども、そこは確認させてください。
■安倍内閣総理大臣
先ほどの児童扶養手当については、いわば、我々、第二子、第三子について、5千円、3千円というのを倍増して1万円と6千円にする、これは代表的な例で申し上げたわけでありますが、それで、もう少し詳しくやりとりするのであれば厚労大臣を呼んでいただければいいんだ、こう思うわけであります。
同時に、所得制限については、これは民主党政権時代からあったじゃないですか。所得制限は根っこについているわけでありますから、これは同じだということは申し上げておきたい、このように思います。
そういう中において、民主党政権のときのことを言うなと言われますが、そのときになかったものを我々としては加算しているということは申し上げておきたい、こう思います。
その上で今の御質問でございますが、今回の児童扶養手当の多子加算の拡充に当たっては、財務大臣と厚生労働大臣の大臣折衝において、不正受給の防止、養育費確保の促進などの観点からの検討が行われていると承知をしています。具体的には、制度を所管する厚生労働省において適切に対応されるものと考えております。
■西村(智)委員
何も答えてくださっていないですね。
これは、本当に始まってしまったらすごいことになると思いますよ。私は、これはもう絶対にやめてもらいたい。そこを今総理から明確な答弁がなかったというのは非常に残念です。
時間がありませんので、もう一問、最後に重要なことを伺いたいと思います。
おととし、一人親世帯のお母さんが娘さんを殺害したという本当につらい事件がありました。家賃を二年間滞納して、それで、公営住宅の明け渡しの強制執行の当日に犯行に及んだということなんです。彼女は、学校給食のパートの調理員の仕事をしておられた。仕事がある月はそれなりの収入はあったと思いますが、仕事がない月は養育費の月三万円ぐらいしかなかった。ところが、児童扶養手当が入る4月、8月、12月には30万円前後の収入がある。それはそれで非常にいいことだと思います。
だけれども、これは多くの研究者が指摘しているところなんですが、とにかく、そういう社会的な給付を受けている世帯は、なかなか家計の管理がうまくいかない。年間の収入が非常にがたついていると、ただでさえ、ならして月平均して使うということができない中で、なぜ日本がこういう年3回という給付を続けているのか。
年金は年単位ですけれども、今、年6回の支給になっています。海外の児童扶養手当に類似する手当の支給頻度を見ると、隔週というところもあるぐらいなんですね、毎月じゃなくて隔週というところも選べるぐらいになっているんです。
公明党も、2010年の法改正時には、支給回数を今の3回から6回にしてくださいという提案をしているんですよ。採決直前には撤回をされているんですけれども。
支給頻度の見直し、総理、せっかく加算を倍増するこのタイミングですから、今回法案も出てくるということになりましょうから、このタイミングでぜひ見直しをしていただきたいと思いますが、いかがですか。
■安倍内閣総理大臣
児童扶養手当の支給回数をふやすことについては、地方自治体における円滑な支給事務の実施体制との関係で難しいわけでございます。
これは、当時の山井大臣政務官が、私と、今と全く同じ答えをしておられます。市町村にとってさらに負担を与えることになり、なかなか非常に厳しい、市町村、自治体の事務負担から考えて厳しいというのが状況であります、まことに申しわけございませんと答弁しておられますが、この状況は残念ながら変わっていないということでございます。
■西村(智)委員
今私が申し上げたことは、最近の研究でようやく明らかになったことなんですね。民主党政権のことをもう何度も言われるので本当に困ったものですが、私たちは、その当時のことは当然反省をしております。その上で前向きな議論をしたいと思って、今申し上げました。
質問を終わります。