************************************** 西村ちなみメールマガジン第35号(2005年7月4日発行) 「疑惑も、疑問も、ひとつも解明されないまま」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 たった今、郵政民営化に関する特別委員会の最後の質疑が終わり、採決を終わって、議員会館に戻ってきたところです。私は午前中、短い時間ですが、参考人の意見陳述に関する質疑を行いました。午後からはテレビ入りで先輩議員が質問、討論ののちの採決は賛成多数で修正案・原案ともに可決しました。もともと自民党の委員の中には、反対派議員もいらしたのです。ところが採決が秒読みに入った先週金曜日に、反対派議員は全員が賛成派議員に「差し替え」られていました。その結果として、委員会室の雰囲気がそれまでとは全く異なり、下品な野次が飛ぶなど、賛成派議員によって自民党席のすべてを占められた委員会が変質したことは、ホームページにも書いたとおりです。反対派ないしは慎重派であった議員の方々がどれだけ良識的であったか、改めて思い知らされました。 109時間に及ぶ審議でしたが、なぜ今郵政民営化なのか、そのメリットとデメリットは何なのか、また官でやること公でやること民でやることはそれぞれ何なのか、法案の解釈は修正によって変わるのか変わらないのか、等々、納得のいく答弁は一つもありませんでした。それどころか、追及されて苦し紛れの答弁をした閣僚から、その答弁の訂正やお詫びが行われ、それのために109時間のうちどのくらいの不必要な時間を費やしてきたかも分かりません。極めつけは総理です。総理は、修正案がまとまる前日まで答弁で「政府案がいちばん良い。修正する必要はない」と言ってきました。ところが今日は、修正案が政府案の変更にあたると認識しているかという問いに対して、「私が最初から修正もありうると言えば、民主党が、修正案を出すくらいなら最初から出せ、と言うでしょう。だから修正もあるとは言わなかったんだ」との発言が飛び出しました。つまりこれは、修正はあると思っていたけれども、ないという虚偽の答弁をしてきた、と自らが語っているに他なりません。語るに落ちるとはこのことです。また、郵政民営化広報企画案にもとづいて全国1400世帯にフライヤー(チラシ)が配布されましたが、ここにびっくりするような記載があるのです。「小泉内閣支持基盤」として「主婦層&子供を中心、シルバー層」を挙げ、「具体的なことは分からないが、小泉総理のキャラクターを支持する層:小泉内閣を支持する層」などと表記した上でそれらを「IQ軸LOW」軸に位置づけ、ここに対する「徹底したラーニングプロモーション」を実施するとした内容です。これにも憤りを感じます。このフライヤーは、作成から配布まで1億5千万円を超えるものですが、随意契約で発注されました。これは政府内の心ある方からの内部告発によって明らかになったことです。 いずれの疑惑も、疑問も、ひとつも解明されないまま、特別委員会の最終日となってしまいました。空しい、というのが率直な感想です。しかし明日の本会議がまだあります。廃案をめざして、最後まで頑張り抜きます。そして人口減少社会に向かうこの国のかたちをしっかりとデザインする、基本的な議論に立ち返るまで、政権交代を目指して、改めてがんばる決意です。 また私は、この郵政民営化特別委員会で、本当にいろんなことを学ばせていただきました。多くの方々が評価してくださるように、民主党の委員会メンバーはよく連携し、中身の濃い質疑を行ってきました。また理事メンバーが委員会運営に全力で取り組む姿から学ぶことも本当に多かったです。今後の国会活動に、必ず生かしていきたいと思います。 昨日の都議選では、私が応援に伺った候補者全員が当選いたしました。皆さんのご声援に心からお礼申し上げます。都議会で民主党が第2党にしていただいたというのは、本当に重要なことと思います。今後ともご支援いただきますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。
メールマガジン
第34号「政治は梅雨入りしないように」(2005年6月27日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第34号(2005年6月27日発行) 「政治は梅雨入りしないように」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 先週土曜日には、後援会「智水会」の総会と交流会を開催させていただきました。会員の皆さんからお集まりいただき、とても良い会にしていただきました。ご協力いただいた方々には、この場を借りて、心からお礼申し上げます。本当にありがとうございました。会場では、これまで発行してきたメルマガをまとめて冊子とし、出席者の皆さんに配布させていただきました。メルマガを知人や友人の方々にご紹介いただくときのPR用として、ぜひご活用くださるよう、お願いいたします。 さて昼のニュースによれば、新潟も遅ればせながら梅雨入りしたのだとか。今朝も8時から東大通交差点で国政報告を行いましたが、30分という短い時間の中でも雨の勢いはどんどん強まり、道路と歩道のあちこちに水たまりができていました。新潟市内も新潟県内も、そして日本ばかりでなく世界の各地でも、集中豪雨による水害に見舞われたことを、雨が降るたびに思い出します。今回の雨が、そういう水害をもたらすことのないように、と祈りながら、新潟を後にしました。 今週も私は、郵政民営化問題に邁進します。明日は新潟県上越市で地方公聴会が開催される予定であり、明朝、私も他の委員とともに東京から越後湯沢経由で上越市へ向かいます。与党の中で修正案をめぐってよほどのことが起きなければ、明日の公聴会と明後日の質疑は予定どおり行われる見込みです。問題点の多い法案ですが、政策論ではなく、むしろ政治論で、法案の行方が決まっていこうとしているのが、たいへん気がかりです。せめて民主党からはきっちりとした議論を行っていきたいと考えています。
第33号「55日間の延長」(2005年6月20日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第33号(2005年6月20日発行) 「55日間の延長」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 国会は金曜日の本会議で55日間の会期延長が決まりました。採決のために開かれた本会議場には、飲酒して赤い顔になっている与党議員が、私の目から見て少なくとも数名いましたが、議長からは何の注意もなく、記名採決が行われてしまいました。大変、情けない話です。 そもそも通常国会の会期は、国会法第5条により、150日間と定められています。ですから法案を提出しようとする内閣あるいは議員は、残り会期を勘案しつつ、法案の審議時間が十分とれるように配慮して、法案提出時期を決めなければならないのです。ところが郵政民営化法案は、3月中に提出される予定が、与党所属のいわゆる郵政族と呼ばれる議員の猛反発に遭い、協議および提出のための合意を行うために、法案提出が1ヶ月遅れました。その遅れを取り戻すために、会期の延長がどうしても必要だったということでしょう。この通常国会の延長は、どう考えても、郵政民営化法案を通過させるためだけのもの。決して自民党の郵政族に組するものではありませんが、今回の法案はあまりにも滅茶苦茶です。小泉内閣の任期が来年秋に迫ってきているからと、自分の都合だけで、時代遅れの政策にこだわり、法案成立に向けてごり押しする小泉総理の認識が、私には理解できません。 小泉内閣が始まって5年。この間、日本では、所得の格差は広がり、ニートやフリーターは増え続け、自殺者も減少の兆しはなく、少子化対策が喫緊の課題といわれながらも手付かずのままで、財政赤字も増えました。国民からの人気はあっても事態を悪化させてきたのが小泉内閣です。郵政民営化を「改革の本丸」とこだわり続けている間に、社会は少しずつ崩壊してきています。10年後、20年後の社会の有り様をしっかりとデザインし、それに向けて1日も早く制度システムの再構築に着手しなければなりません。しかし現政権は、自らのせいでこんがらがってしまった問題すら棚上げ・先送りして、そしてたいていは「私はやっている」と嘯いて、解決のための努力をしないままです。総理および総理人気に乗るだけの与党に対して、大きな怒りを覚えます。 ところで法案一つが採択されるまでには、いくつかのプロセスを経なければいけません。衆議院では、①法案の趣旨説明→②本会議質問→③委員会審議→④公聴会→⑤委員会採決→⑥本会議採決→参議院へ、と、ざっと思いつくだけでもこのような手順を踏むことになります。②と④は、省略することもできます。現在、③の委員会審議を最低100時間やろうという理事会での合意のもと、5合目くらいまでは質疑が進められてきたでしょうか。また今回、④公聴会の一環として、新潟県内で地方公聴会が行われることになりました。長岡市で開催することを軸に理事会で調整中とのことです。 与党内での法案修正も含みを残しているようですので、いつ、どのような形で採決が行われるのか、法案の行方は見通しが立ちません。しかも小泉総理は自民党議員に対して解散カードと公認カードを、また公明党は推薦カードを、それぞれちらつかせています。6月24日は東京都議会議員選挙が告示となります。都議選のある年は国会延長はないという、これまでの定式を破って国会延長が決まりました。何があっても、対応できるようにしておかなければ、と思います。 先週もほとんど第1委員会室にカンヅメになっており、金曜日の夜も新潟に帰ることができずに、東京に滞在しました。土曜日の早朝ようやく、新潟へ帰ってくることができましたが、この日は新潟市内も天気が良く、夕方、事務所から自宅へ帰る道を少し遠回りして関屋浜に立ち寄りました。真っ赤な夕日がちょうど海の上の霞に溶けこもうとしているところで、波の音を聞きながら、烏賊釣り漁船の灯かりと夕日を交互に眺めました。防波堤の上には、釣りをする人、並んで座って海を見ているカップル、手を繋いで歩く家族連れ・・・たった数分間の寄り道でしたが、すべての生のすばらしさに心から感謝しました。新潟の街と人からエネルギーをもらい、また今週も、国会でがんばってきます。
第32号「耳障りのいい言葉だけ」(2005年6月13日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第32号(2005年6月13日発行) 「耳障りのいい言葉だけ」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 先週、今週と郵政民営化特別委員会の関係で、月曜日に備え日曜夜に東京入りしています。新潟駅頭での国会報告ができず、申し訳ありません。 今日は郵政民営化に関する特別委員会で1時間の質問をしました。終わってみれば反省点ばかりなのですが、また次につなげたいと思います。 昨日のNHK「日曜討論」をご覧になりましたでしょうか。番組中、自民党の山崎拓筆頭理事から驚くべき発言がありました。国会の会期延長に関連して、「会期は鉄道でいえばレールみたいな話であって、レールの上に石を置くようなことはやるなと。投身自殺なら男らしいが」。午後からの野党質問で、私が午後のトップバッターでしたので、質問の冒頭で委員の1人として抗議しました。そして官房長官に所見を求めたところ、「延長の問題につきましては、もちろん政府としては、ぜひこの問題の重要性にかんがみ、これを含みまして、今後とも成立に向けてよろしくお願いしたいという立場でございます」との答弁だったのです。 閣僚が国会の延長に口を出すということは、国の最高機関としての国会の地位にかかわる問題につながってきます。理事の言葉を借りれば「内閣がふっとぶくらいの話」だったのですが、官房長官からその後、答弁の中の「これを含みまして」の部分を速記録から削除することの発言があり、今日のところは収束。明日、また理事会で議論していただくことになっています。 聞けば聞くほど訳の分からなくなってくる今回の法案です。法案の中身そのものが矛盾だらけ。また審議が始まってたった2週間しか経っていませんが、そのときの都合で答弁をすり替えているので、答弁がくるくる変わってきています。地域の郵便局は残せるのか。残せたときに業務は維持されるのか。民でしかできないこととは何なのか。郵便貯金銀行、郵便保険会社、こうした名前がついた民間会社もおかしいのですが、果たして民営化したときに、民業圧迫となるか、もしくは現時点で340兆円という貴重な資産を外資にもっていかれることはないのか。すべて耳障りのいい言葉だけで法的な措置はまったくないままです。与党を騙し、野党を騙し、国民を騙して、無理に通そうとしている今回の法案。廃案しかない、と、質問を終えたあと改めて感じています。 19日に国会は会期末を迎えます。週末に向けて、まだ緊迫した状態が続きます。
第31号「郵政民営化特別委員会」(2005年6月6日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第31号(2005年6月6日発行) 「郵政民営化特別委員会」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 6月1日に「郵政民営化に関する特別委員会」に民主党が名簿を提出しましたが、このとき、私も委員として加わることになりました。財務金融委員会と総務委員会が主たる関係委員会ですので、そこから委員を集めたと思われます。全部で45人となる委員のうち、女性議員は私1人だけ。生活者そして利用者の視点から議論ができれば、と思っています。 特別委員会は、開催曜日が定められている常任委員会などとは異なり、曜日に関係なく、しかも朝から夕方までびっしり審議を行うことができます。1日にさっそく「お経読み(法案の趣旨説明)」があった後、2日の予算委員会をはさんで3日から審議が始まりました。今日は月曜日であり、本来であれば本会議も委員会も開催される曜日ではないのですが、朝から夕方まで質問が行われました。部屋は、第1委員会室といって、皆さんがテレビなどでよくご覧になる予算委員会の行われる、古めかしい、赤茶色の部屋です。机が狭く、足が出せないうえ、椅子も小さいので、体の大きくなった現代人には結構つらいようです。折しも衆議院主導で国会にも「クール・ビズ」なるものが導入され、ほとんどの人が上着をとって委員会に出席しています。部屋の設定温度も高くなり、上のほうでカメラを構えるマスコミの人たちの汗をぬぐう姿も増えました。そういう部屋で一日、郵政民営化に関する法律案6法が審議される様子・・・ぜひ一度、皆さんにも見ていただきたいと思います。 今日は、中央省庁等改革基本法33条1項6号をめぐる、先輩議員の質問で委員会が止まりました。「止まる」とは、委員長が速記を止めることを命じ、与えられた質問時間をはかっている時計を止めることを意味します。中央省庁等改革基本法33条1項6号は平成10年の通常国会で成立した法律で、郵便局については「新たな公社とすることにより、・・・民営化等の見直しは行わない」と定めています。国会の中で3人の郵政大臣が、この条文の解釈について「基本法に見直しはしないと書いてあるから、見直しはない」と答弁していました。民営化はしないという意味の法律がある限り民営化はしない、ということですから、民営化法案を出す前に、こちらの法改正を先に行うべきです。問題の所在は、歴代3人の郵政大臣が政府見解として述べてきたところの国会答弁を無視して、法案を提出してきた、手続きの欠陥にあります。 ところが竹中郵政民営化担当大臣は、今日の委員会で、「それらの発言は、閣僚であった3人が、一政治家の『心情』として述べたに過ぎない」と答弁。もし国会答弁が簡単に覆るようなことがあれば、国会での審議など無意味となってしまいます。これまでも再三、委員長から、「誠心誠意答弁するように」という注意を受けてきた竹中大臣でしたが、これほど雑でいい加減な答弁をされるとは、本当に驚きでした。1時間ほど委員会が休憩に入ったのち、明日までに、この問題についての政府としての正式見解をもってくる、という理事の間の協議で話がまとまり、質問は再開されました。 私も今週後半か来週には質問の出番があると思いますが、特別委員会は見通しがなかなか立ちません。何を審議するのか、参考人はどなたをお呼びするのか、質問時間は何時間か、すべて決まるのは前日の夕方もしくは夜になるといういわば「その日暮らし」。初めての特別委員会に、まだ多少戸惑っています。
第30号「国民保護?」(2005年5月30日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第30号(2005年5月30日発行) 「国民保護?」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 最近、上越新幹線にお乗りになった方はご存知と思いますが、現在、新幹線車両の中のゴミ箱は口に白いテープが貼られ、使用できなくなっています。また車内では「JR東日本では、警察のご指導をいただき、車内の警戒を強化しております・・・」などとアナウンスが流されます。テロ対策として、新幹線のゴミ箱が閉鎖されてしまったのです。 乗客は、車内のゴミ箱が閉鎖されているので、駅弁の空箱などのゴミは、持って降りることが求められています。持って降りると、ホームに清掃の方がゴミ袋を広げてもっていて、そこに入れるか、さいきん設置された透明なゴミ箱に入れるかします。ゴミをもって降りるのが面倒な人は座席においていくようです。 ゴミ箱にも放置できないほど危険なゴミを、清掃員の方が手に持っているビニール袋に入れることは、危険ではないのでしょうか。またゴミそのものが危険であれば、それがゴミ箱にあろうが網棚の上にあろうが、同じことなのではないでしょうか。私は疑問に思っていました。 ある同僚議員が、この上越新幹線のゴミ箱について衆議院安全保障委員会で質問していました。上越新幹線、東北新幹線など、JR東日本管内の新幹線ではゴミ箱は閉鎖されているのですが、JR東海管内の東海道新幹線ではゴミ箱は使用しているということなのです。この理由について同僚議員が質問したところ、「東北、上越は乗車時間が短いから」という「あくまでもJR側の自主的な判断と管理の内容」にゆだねているということでした。どうやら乗車時間に反比例して車内ゴミの危険が高まるという理屈のようです。 さて、日本では現在、ちょうど約一年前の2004年5月20日に成立した、いわゆる「有事関連7法」により、各地方自治体に義務付けられた国民保護計画の策定作業が進められています。このための諮問機関として協議会を設置するための条例案と、対策本部を設置するための条例案の二案が、新潟県でも6月県議会に提案される予定と聞いていますが、新潟県は中越地震のため作業が遅れ、全国でも協議会が未設置の2県のうちのひとつとなりました。政府は、都道府県に対して2005年度中に、市区町村に対しては2006年度中に、国民保護計画の策定を求めています。 2004年の「有事関連7法」に先立って2003年の通常国会では、「有事関連3法」が成立していました。この3法では、有事における政府の対応を定めると同時に、自衛隊が「円滑に」活動できるようにし、そのための自治体の責務や国民の協力が盛り込まれました。基本的人権が侵されかねないという懸念が各方面から表明されていたのは記憶にも新しいところです。また昨年の有事関連7法により米軍が「円滑に」活動できるようにもなりました。それら有事に対応する国や自治体や公共機関などの役割は、武力攻撃事態対処法(2003年3法)そして国民保護法(2004年7法)に定められています。 有事法制の制定にあたっては、概念などをめぐって細かな議論が行われてきました。民主党も、昨年の有事関連7法の審議の際には、対立法案とはしない、という現場サイドの判断により、与党との修正協議も行ったところです。 しかし、もし仮に有事となったとき、これらの法律は実質的に国民の保護のためにどれほど機能することができるのでしょうか。JRの対応に見ることができるように、日本のテロ対策とは「やった」というアリバイづくりにとどまっています。また村上龍氏の最新作『半島を出よ』で鋭く指摘されているとおり、ケースに応じて避難指示などを誰がどのように出すかなどについての具体的な記述は国民保護法にはなく、ゆえに省庁縦割りになっていることの弊害が出るのではないかと懸念されます。つまり、法律ができても、きちんとそれを動かすことのできるだけのシステムに日本全体がなっていない。絵に描いた餅に終わる危険性があるにもかかわらず、法律だけができてしまった。こういうことではないかと思います。 それではいったい何のための有事立法だったのでしょうか。「有事に備え、国民の生命と財産を守る」とは、推進派政治家の常套句でした。本当に国民の保護を立法の目的として掲げるならば、取り組む順序が異なってしかるべきです。しかし実際には、基本的人権の保護のための立法は、順序が後回しになってきました。嬉々として有事法制3法、7法の制定に取り組んできた人たちの狙いはもっと別のところにあったのではないでしょうか。端的に言えば「戦争ができる国にする」ことが、本当の狙いだったのではないでしょうか・・・ これから各自治体で策定される国民保護計画が、少しでも現実にそくしたものとなるよう、民主党としても提言を行っていけたらと、今は自戒をこめて考えています。
第29号「奇妙な株式会社」(2005年5月23日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第29号(2005年5月23日発行) 「奇妙な株式会社」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 郵政民営化法案をめぐる取り扱いが山場を迎えました。私が所属する総務委員会にとっては、郵政事業も重要な審議事項です。郵政民営化法案が総務委員会に付託されたときには、小泉式民営化が不要不急であることと問題だらけであることなどを委員として問いただすつもりでいましたが、先週金曜日の本会議で野党欠席のまま、郵政民営化特別委員会の設置が決められてしまいました。大変残念です。報道によれば、総理は官邸からこの特別委員会の人事を指揮したとのこと。解散総選挙と候補者公認などをちらつかせながら与党議員をコントロールする小泉総理の賢しいやり方には、舌を巻くほかありません。 今回の法案には、あらためていうまでもなく、いくつかの重大な問題点があります。修正を前提としたままの欠陥法案を提出していること。郵便局ネットワークの設置基準など郵政事業の根幹にかかわる部分の多くは法案ではなく政府の裁量で変更できる政省令に委ねていること。条文にミスがあること。昨年、年金制度改正法案においても条文の間違いが発見されましたが、今回は、必要性も緊急性もないが出されてきた、世にもまれな悪法であると思います。そもそも中央省庁等改革基本法には、郵政公社とすることにより「民営化等の見直しは行わない」とされており、法案そのものが法律違反であるという極めて異常な事態になっています。 肥大化を続けてきた郵貯・簡保のかかえる問題点は、今回の民営化では解決しません。また現在の郵政公社の運営には税金は一円たりとも使われていないのです。むしろ民営化によって、株主を国とする奇妙な株式会社が誕生することになり、結果して民業圧迫になる可能性は大です。 財政投融資の金がこれまで無駄遣いされてきた責任は、郵貯・簡保にあるのではなく、使う側、つまり政府の側にあると思います。民主党は、行政改革を行うにあたっては特殊法人の原則廃止や特別会計の改革、天下りの禁止などを訴えてきました。これからも、本物の改革を訴えていくつもりです。 民主党の今回の戦術については、皆さんからもいろいろご意見のあるところだと思います。どうぞ忌憚のないご意見をお寄せくださるよう、お願い申し上げます。
第28号「すべての人が支えるべき政策分野」(2005年5月16日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第28号(2005年5月16日発行) 「すべての人が支えるべき政策分野」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 「障害者自立支援法」という法案が国会に提出され、先月末から衆議院で審議がはじまりました。この法案について、国会周辺では、廃案を求める声、改正を求める声、慎重審議を求める声、程度の差こそあれ法案を問題視するさまざまな市民団体・当事者団体などが、連日、抗議行動や集会を行っています。これほど多くの行動が展開されるのは、昨年の年金制度改正法以来。法案の中身および提出のプロセスに重大な問題点があることの表れといえましょう。 話は昨年10月にさかのぼります。厚生労働省が突如、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン)」を発表しました。国連では現在、障害者権利条約制定に向けて急ピッチで議論が進められていますが、ここでNGOなどが「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing about us, without us)」というスローガンを繰り返し訴えています。政策決定の際には、当事者の意見を十分聴取するなど、市民と政府との協働が重要だという認識は、いまや国際的な常識となっています。ところがこのグランドデザイン策定は、当事者への協議や説明が不十分なまま行われ、内容そのものが荒削りであったこともあり、大きな戸惑いと不安を生じさせることとなりました。そのグランドデザインの具体化として、今通常国会に提出されたのが、「障害者自立支援法案」です。 この法案の第一の問題点は、「応益負担」の導入です。2003年4月からスタートした支援費制度は、サービス使用量の増加を見誤ったことなどにより、大きな赤字を生み出してきました。厚生労働省は、このことに対する評価をきちんと行わないまま、予算不足の現状だけをクローズアップしています。そしてこれまでは所得に応じて利用料の支払額が決まる応能負担の原則であったところ、利用するサービス量に応じて原則1割を負担する応益負担の導入が法案に盛り込まれました。 障害者の雇用促進は、法律によって目標数値が定められ、企業などへも努力義務が課せられてはいますが、実際に改善はなかなか進んでいません。また障害の重い人ほどよりサービスを必要とするという現実もあります。そうした中で、応益負担を導入すれば、受けるサービスを削らざるを得ない人も出てくるでしょう。そのため障害の重い人たちからは悲鳴にも近い声が上がっており、国会の内外からも障害者施策としては不適切な制度なのではないかという批判が強まっています。 現在グループホームで生活している人たちが、この法案が施行されるときには、障害の程度に応じて入居施設がふるい分けられることになるという点も問題です。グループホームは、障害者の方々や高齢者の方々にとって、より自分の家らしく過ごすことのできる地域の拠点として、各地で定着してきました。ひとつのグループホームに障害の程度がさまざまな方々が、一緒に生活しているところもあります。ところが法案では、障害の程度によって、軽度障害はグループホーム、重度障害はケアホームと、住むところが分けられてしまうのです。住み慣れたグループホームを出なければいけない方々が出てくる可能性があります。 今回の法案においては、知的障害・身体障害・精神障害の枠にとらわれず、また障害をもつ児童を加えて、障害者施策がひとつの制度・法律の中で統合されることになります。そのことについては、私たち民主党も主張してきたことであり、評価したいと思いますが、上記のほかさまざまな問題点があり、すんなりと審議し通過させるということはできないでしょう。法案に反対するか修正を求めるか、今後の議論にゆだねられることになります。 障害者施策は、当事者のためだけのものではありません。障害者が暮らしやすい社会は、誰にとっても暮らしやすい社会であるはずです。また、今は健康でも、いつ何時、事故などにあって障害者にならないとも限りません。すべての人が支えるべき政策分野です。ぜひ皆さんからも関心をもっていただき、ご意見をお寄せいただきたく存じます。 ******************************* 民主党では「住民基本台帳法」一部改正案について皆さんからの意見募集(パブリックコメント)を行っています。住民基本台帳は、現在、原則公開とされており、誰でも大量閲覧が可能な状況となっています。しかしこの大量閲覧により、ダイレクトメール等が送られてくるという苦情や、プライバシー侵害の不安が、急速に広がっています。また住民基本台帳を閲覧して母子家庭を探し出し、わいせつ行為に及ぶという卑劣な事件が発生しました。こうした危機的事態をうけ、民主党では、原則公開となっている現在の住民基本台帳法を、原則非公開とし、公益目的のものであっても相当な理由がない限り非公開とするため、改正案を準備しています。みなさんからのご意見やご提案をお待ちしております。 民主党「住民基本台帳法一部改正案」へのパブリックコメント募集 期間 2005年5月9日から5月23日まで 方法 電子メール・郵送で受付 ・電子メール public@dpj.or.jp ・郵送(あて先)100−8981東京都千代田区永田町2−2−1衆議院第1議員会館 民主党政策調査会 住民基本台帳法パブリックコメント担当
第27号「国境のない問題」(2005年5月9日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第27号(2005年5月9日発行) 「国境のない問題」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 私は4日から公務でモンゴル国ウランバートルを訪問し、きょう戻ってきたところです。モンゴルは最高気温10度前後で湿度も低い国でした。成田で帰りの飛行機から降り立つと湿った空気が体にまとわりついてきました。あらためて日本の湿潤な気候を再認識したところです。 今回の訪問は、民主党を代表する公式訪問団として、衆議院議員の枝野幸男さん、参議院議員の福山哲郎さんと私の3人が派遣されたものです。3年前、モンゴルのバルスボルド自然環境大臣が日本にこられた際にモンゴルの環境問題の深刻さについて民主党で訴えられ、それを受け止めた民主党が当時ネクスト環境大臣だった衆議院議員の小宮山洋子さんを団長とする訪問団を派遣したのがモンゴルと民主党の交流のきっかけになったとのこと。呼びかけに応じて民主党所属議員全員が一人1日分の歳費をモンゴルの自然環境保全のための植林活動に寄付したそうです。元衆議院議員で現在は環境NGOの活動のため一年の半分をモンゴルで過ごすという高見裕一さんがご尽力くださり、交流はさらに厚みを増してきました。 昨年12月、バルスボルド大臣が再度来日され、民主党議員有志との交流会がもたれましたが、その席上、5月に大臣が私たち3人を招待してくださることになったのです。 スケジュールはたいへん過密でした。多くの方々とお会いし率直な意見交換をすることができたばかりでなく、実際に活動する現場を観察させていただくこともできました。また若い人たちとの交流の場を2度つくっていただいたのも貴重な体験でした。目をきらきらさせながら私たちに質問をぶつけてくる姿勢には、本当に学ぶことが多いと感じます。 モンゴルでは環境はきわめて重要な問題です。温暖化の影響は、海面の上昇に伴い水没の危機にさらされているツバルのような小さな島ばかりではなく、水資源がおおきく左右するモンゴルのような内陸国にも、およんでいます。このためゴビ砂漠は年々拡大し、ここに1990年に民主化後、市場経済が導入され格差が広がっているモンゴルで木を切り倒し燃料として売るなどの人為的な要因が加わり、水資源問題は喫緊の課題といわれるようになりました。新潟でもこれからの時期には黄砂が大量に降ってきますが、これがゴビ砂漠から中国大陸を越え、海を越えてやってくるのです。またウランバートル市内には地方から人口流入がすすんでいますが、地方出身の貧困層が市街地郊外につくって暮らしているゲル村から出る煙は、車の排気ガスとあいまって、冬場は喉が痛くなるほどの大気汚染をもたらしています。 こうしたなか政府のイニシアチブで、グリーンベルト構想が唱えられました。モンゴルの国土を東から西へ横断するように植林活動を行うというものです。またこうした国を挙げての植林活動に、ストリートチルドレンやスラム生活者に対する支援活動を行っている現地NGOも参画し、植林活動への参加を促すという非常に興味深いプロジェクトも拝見してきました。 今回の訪問ではまた、新潟とモンゴルとのつながりも確認させていただくことができました。昨年の新潟県中越地震の際にはモンゴルから毛布と義援金が届けられ、これに対して各方面でお礼を申し上げたところ、学生や若い人たちが自発的に行ったことであるとのことです。 バルスボルド大臣は、若い人たちとの交流の場で、米ソ両国がホットラインで戦争の危機を回避した歴史を紹介し、政治家同士の交流が大切であることを訴えられました。国と国との関係も重要ですが、多元的な交流も重要です。環境という、国境のない問題には、いろんな垣根を越えた解決方法を探していかなくてはなりません。個人対個人の交流が基本になることを改めて感じました。 大勢の方々にお世話になり、多くのことを学ぶことができました。これから報告書の作成と具体的に成果をどう生かすかという検討にうつります。数日以内にはそれらについて詳しくホームページで報告したいと思いますので、ぜひそちらをごらんください。今晩はこれから財政の勉強会の予定です。
第26号「5月3日は憲法記念日」(2005年5月2日発行)
************************************** 西村ちなみメールマガジン第26号(2005年5月2日発行) 「5月3日は憲法記念日」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 大型連休、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。天気にも恵まれ、遠回りして散歩したくなるような陽気が続いています。私は4日から公務でモンゴルを訪問することとなり、準備に追われています。この訪問についてはまた後日メルマガ等でご報告したいと思います。 さて明日は憲法記念日です。国会では、衆参両議院にそれぞれ憲法調査会が平成12年1月20日に「日本国憲法について広範かつ総合的な調査」を行うため設置されました。以来、5年あまりの議論・調査を経て、先月末にそれぞれ報告書がまとめられたところです。衆議院憲法調査会による「衆議院憲法調査会報告書」は683頁、参議院憲法調査会による「日本国憲法に関する調査報告書」は298頁。いずれも厚い報告書ですが、私の事務所に置いてありますので、ご覧になりたい方は事務所までお電話のうえお気軽にお越しください。 そもそも憲法とは何なのか。多くの学説等で共通しており、また民主党の憲法調査会でも確認されたとおり、公権力に対して一定の制限をかけるという役割を担う、中心的な存在であるといえます。そして、憲法で国民の権利と定められている項目がしっかりと私たちの生活の中に根付き、それによって主権在民の理念が具体化されていくことが期待されます。そういった意味で、憲法は不磨の大典とすべきではありません。つねに政府の公権力と私たちの人権・権利の間で、憲法を鍛えていくことが必要だと思います。 しかし今回の憲法調査会での議論および報告書について、本当にそういう意味から論議が行われてきたのだろうか、と首をひねらざるを得ない点が散見されます。 たとえば「公権力のコントロール」という、憲法に課せられた第一の目的から逸脱するものですが、国民の義務と責任を追加し明記すべきだという、主に自民党からの意見がかなり出されました。問題の所在には共感できるものもありますが、しかし憲法に義務規定を増やしたところで解決につながるとは思えません。 また、ここ10数年の間、官僚機構に対して内閣のリーダーシップを強化すべきという議論がありましたが、肥大化する行政府に対して立法府の役割をどう明確化するかという課題については、首相公選制も含めて、ずいぶんトーンダウンしました。自民党の関心の無さの表れといえましょう。 そして憲法改正といえば真っ先に槍玉にあがってきた第9条についてですが、国際社会への貢献を可能にするという言葉は美辞であるものの、国連中心主義というこれまでの日本外交の大原則を貫くのかアメリカ追随でいくのか、前提が曖昧なままの議論となっています。中身はまだ見えないがそれを入れる箱を先に作ろうというのは、議論の順序が逆なのではないでしょうか。 付け加えて、第96条で定められている国民投票法制は、憲法の中に制度化された国民の憲法制定権力の発露であって、現在この国民投票法制が不在であることは立法の不作為とみなければならず、しっかりとした制度設計をしなければなりません。しかし憲法改正を急ごうとするあまり、この国民投票法制を骨抜きにしようとする動きがあることは、本当に理解に苦しみます。 そもそも、憲法を改正しようとするのであれば、それに先んじてやらなければいけないのは、「目指すべき国家像」は何か、それを明確にすることではないでしょうか。その国家像の先にこそ、ふさわしい憲法の姿があるはずなのです。「Constitution」の訳語としては、「国のかたち」がもっともふさわしい、と複数の有識者から伺いました。「国のかたち」を議論せずして憲法は語れません。国のかたちが曖昧なまま改憲された憲法が、戦後60年近くかけて定着してきた憲法より、優れているはずだと、胸をはって国際社会の中で言うことは難しいと私は思っています。 ずいぶん長い時間、憲法調査会での議論が行われてきたのですが、結局のところ同床異夢でスタートした調査会、緻密な報告書をつくること自体に無理があったのではと思わざるを得ません。これから憲法調査会は新たな段階に入ることになります。議論を注視してまいります。